2010年04月02日

新西海橋

P1031117
長崎県の西彼杵半島と針尾島を結ぶアーチ橋。車道部分は西海パールラインという有料道路の一部になっている。歩道は、西海橋公園の遊歩道の一部として、橋桁の下に吊り下げられる形態で設けられている。

新西海橋は、いわゆる中路式アーチ橋と呼ばれる形態を有し、上に凸の弧を描くアーチと交差するように橋桁が設けられている。下図奥側に見える西海橋は上路式アーチ橋と呼ばれる形態で、アーチの上に橋桁が設けられている。なお、図示しないが、アーチの下に橋桁が設けられる形態は下路式アーチ橋と呼ばれる。
P1031167

中路式アーチ橋の場合、橋桁のアーチより下にある部分はアーチにワイヤ等でぶら下がっており、
P1031140
アーチよりも上にある部分は、アーチ上に突っ張り棒を介して載っている。
P1031123
面倒なことせずにどっちかにしなさいよと思うわけだが、そこはそれ、色々事情があるわけである。
とはいっても、細かく見ていくとやはり面倒そうだ。
P1031126
ワイヤに吊られてる部分の下は下図のようになっていて、ネジで張力の調整ができそう。このネジは単なる固定用かもしれないが、ワイヤで吊る以上、張力の調整が何らかの方法で行われるはずだ。
P1031148
突っ張り棒の両端は、下図のように球面同士が接触するような構造になっている。突っ張り棒も、洗濯物を干すやつや箪笥の転倒を防止するやつのように、突っ張る力を調整できるようになっていないと現場で困ってしまうので、何らかの方法で突っ張り力を調整できるのであろう。
P1031144
で、中路式の場合、このぶら下がりと突っ張り、それぞれで調整が必要なだけでなく、両者の関係もうまいこと合わせなければならないのではないだろうか。そうしないと、どちらかに負荷が偏ってしまう。
実はそんな心配は要らなくて、えいやで作っても橋桁がうまいことたわんでそれなりにバランスがとられるのだろうか。巨大建造物を見るときに、各部材を変形しない剛体として捉えてはならないことは承知しているのだが、どうにもスケールがわからない。

さらには、橋桁は一方でワイヤでぶら下がり、他方で両端が球面の突っ張り棒に載っかっているだけなのでフラフラする。そのフラフラを抑えつつ、やっぱり地震も考慮して少しは動くようにしてるわけで、橋ってステキ。
P1031147

P1031018

P1031142

アーチの部分は鋼管を組み合わせてできあがっており独特の外観を有しているのだが、中にはコンクリートが充填されているのだそうだ。
P1031151

P1031149

歩道は、前述のように公園の一部なので、なにやら素敵に曲がっていたりする。
P1031139

トイレも立派だ。
P1031134
これって外から中が見えるのではないかと、特に男性の場合、使っていて外の人と目が合うのではないかと、外から見たときに心配したのだが、そんなことはなかった。

隣の西海橋と合わせて見所の多い橋であるので、佐世保に訪れた場合には是非足を伸ばしていただきたい。
P1031145

P1030974
ちなみに、上図奥側に見える3つのコンクリート製の塔は、旧日本海軍が無線通信に使用していた針尾送信所の無線塔。真上から見て正三角形となるように配置されているそうだ。新西海橋のアーチが、3本の鋼管を正三角形状に配置してなるのは、この塔と関係があるのだろうか。


ラベル: 九州 アーチ橋
posted by メカパンダ at 02:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月31日

西海橋

P1031050

長崎県の西彼杵半島と針尾島を結ぶアーチ橋。ハウステンボスの近く。
戦後日本の橋梁技術史に名を残す名橋とのことだが、そういった細かい話を聞かなくとも、この橋は素晴らしい。この橋一つで十分な観光地になろうというものだ。
P1030982

P1031016

P1031099

P1031068

P1030967

P1031009

西海橋の完成からおよそ50年を経て、隣には新西海橋が架けられている。
P1031167
こうして見ると、新西海橋が西海橋を強く意識したデザインであることが良くわかる。この橋の隣にありふれた形状の橋を架けるわけにはいかない、と皆に思わせるだけの力が西海橋にはあるのである。

ラベル: 九州 アーチ橋
posted by メカパンダ at 00:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月07日

牛深ハイヤ大橋

P1020824

熊本県天草市、天草諸島下島の南端、牛深港の上空に架けられた円弧状の桁橋。湾状になっている牛深港の入口部分に架けられており、住宅地を避けるバイパスの機能を有しているようだ。
くまもとアートポリスという熊本県の事業の一環で、設計に高名な建築家が加わったため桁橋のイメージからは想像できない特異な外観を持つ橋である。

ともかく、白い。
P1020839

そして、曲がっている。
P1020831

P1020826

P1020844

曲がっているモノをキレイに並べるなんて、どんだけ面倒くさいコトしてるんだ、という感じである。側面にずらっと並んだ板(高欄風除板と呼ぶようだ)なんて、歩行者を風から守るとか、強風時に橋桁にかかる力をどうのこうのなんて言われているが、イヤそれ、やりたかったって言いなさいよと思う。やりたかったでイイのだよ。予算があれば。

P1020834

予算云々で言えば、ご時世にありがちな設計当初の思想を無視した照明の間引きをしていないのは素晴らしいと思う。

日中の写真がないのだが、日中は日中で、海上に描かれた白い弧が印象的。

この橋に関しては、景観的にダメなんじゃないか、効果に対して金かけ過ぎなんじゃないか、という疑問が噴出しているわけだが、熊本県に住まない者が文句を言える筋合いのものではないだろう。

金はともかく、景観ってなんですか的にやってみたいからやっちゃおうぜ的にこんなことをやってのけるのが、浮かれたときの日本人なのだ。
できちゃったらできちゃったで、謳い文句通りに景観に溶け込んでなんかいないぜ!なんて思いつつ、我々はただそれを愛でればよいではないか。


ラベル: 九州 桁橋
posted by メカパンダ at 00:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月20日

クレーン船さんこう、ひろしま

クレーン船は、クレーンを載せた船。起重機船、フローティングクレーン(FC)等とも称される。

こちらは「さんこう」
PC319792

PC319790



こちらは「ひろしま」
PC319802
広島港から江田島へ向かうフェリーの船室内から撮影。雪が舞っていて、船外に出る気合い無し。


どちらも広島港を根城としているようだ。
この2隻、四角錐状のジブ(腕の部分)と、その上下方向への角度変更機構に特徴が見出せる。我々がよく見るクレーンのジブの角度変更機構は、ワイヤーと巻き上げ機の組み合わせか、油圧シリンダーだったりするわけだが、この2隻は、スクリュー・ナット?のスライド機構とリンク機構を組み合わせた構成のように見える(想像)。

どうも、この形のクレーンは古いようで、太平洋戦争時には既にあったようだ。なぜわかるかって、タカラホビーの戦艦大和の模型の付属パーツに同様のものがあるからだ。
また、横浜みなとみらい線の元町・中華街駅のホームの壁面に昔の横浜港の写真を使った装飾があるのだが、そこに写っているクレーンのジブもこんな形状をしているように見える。

昔は、鋼製ワイヤーに今ほどの強度がなかったから、ジブをこんな形状にしてスライド機構とリンク機構を用いてジブの上下を行っていて、その生き残りがこの2隻、と言うのが私の勝手な推測だが、実際どうなのだろうか。
posted by メカパンダ at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月12日

安芸灘諸島連絡架橋 (安芸灘とびしま海道)

安芸灘諸島連絡架橋(通称:安芸灘とびしま海道)は、現在の所、本州(広島県呉市)から瀬戸内海の下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島、平羅島、中ノ島、及び岡村島を繋ぐ7つの橋からなる。終端の岡村島は愛媛県であり、その他の島々は広島県である。

安芸灘諸島連絡架橋は、東側に設けられている本州四国連絡橋の尾道・今治ルート(しまなみ海道)にちなんで、裏しまなみ海道と呼ばれることもあるそうだ。全て対面2車線の橋で構成されており、しまなみ海道の橋々に比べて派手さは無く、確かに「裏」感が漂う。
しかし、吊橋、斜張橋、トラス橋、及びアーチ橋、と形式の豊かさでは負けてはおらず、そもそも島の街並みと橋の姿を交互に眺めながら道を行く楽しさに甲乙はない。(と言いつつ、最後の二つは写真を整理していて殆ど区別が付かなかったのだが。)

岡村島で行き止まりになってしまうのは少々残念だが、そこからフェリーで四国本島か他の島に渡るのもまた旅行のアクセントとして良いのではないだろうか。例えば、岡村島から四国本島の今治までは1時間半ほどの行程だ。今治までの行程には、来島海峡大橋をくぐるというステキイベントもある。

以下では、7つの橋を本州側から順番に紹介する。

安芸灘大橋
PC319903

PC319870



蒲刈大橋
PC319890

PC319909



豊島大橋
PC319919

PC319930



豊浜大橋
PC319940

PC319948



平羅橋
PC319965

PC319970



中の瀬戸大橋
PC319968

SDIM0949



岡村大橋
PC319981

PC319977

posted by メカパンダ at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

地球深部探査船ちきゅう

来月、2010年3月6日・7日には、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する地球深部探査船「ちきゅう」の一般公開が、清水港で行われる

清水港であれば関東、東海から訪れやすいので、これを機に多くの方にちきゅうを見学していただき、JAMSTECの活動への理解を深めていただきたいものだ。これ、独立行政法人への風当たりが強くなってきたこのご時世にはとても重要。
以下の紹介がその一助になれば幸いである。

ちきゅうとは、こんな船。
20091018-PA188913

船体中央部にそびえ立つ櫓とその周囲に配置された複数のクレーンが特徴的だ。
20091018-PA188929

櫓の高さは、船底から130m。高い。
20091018-PA188796 パノラマ写真

そして、この櫓の足下には、船体を上下に貫通する穴(ムーンプール)が設けられている。下図は、櫓の足下を拡大したものだ。下図に円錐状の物が直立している床があるが、その下の真っ暗な部分がムーンプールである。この下に海面があるわけだ。
20091018-PA188809

さて、こんな穴のあいた船で何をするのかというと、海底の地盤をドリルでごりごりと掘って地層のサンプルを収集するのである。ムーンプールを介してドリルを海底に向けて降ろすのであり、その上げ下げや組立の作業を行うのが櫓。
ドリルを回すのは、下図左のやや上に写っている黄色いモーター。その手前にあるオレンジ色なものは人間。
20091018-PA188819

サンプルを何に使うのかというのは色々あって、海底内生物の研究とか、地球構造の解明に用いられる。南海沖の海底を7000m掘ってマントルのサンプルを得て、地震のメカニズム解明に役立てるのが大きな目標の一つらしい。

ただ、このちきゅう、統合国際深海掘削計画(IODP)という国際的な科学プロジェクトに用いられるために建造されたものであるので、日本の税金で作ったからといって、完全に日本の都合で好き勝手に使えるわけではない。日本は、ちきゅうを提供することによって、このプロジェクトにおける一部の研究テーマの主導権を得た、というような話のようだ。核融合にしろ大型加速器にしろ、巨大科学プロジェクトにおける政治的な話はよくわかりませんね。

下図がドリルの先端(ビット)。これをごりごり回す。
20091018-PA188839
真ん中に穴があいているが、この穴は、この内部に挿入されるパイプの中に地層のサンプルを詰め込むためのものだ。また、この穴は流体を噴出するためにも用いられる(違う穴かもしれない)。

ビットから流体を噴出する理由の理解のためには、まず、ドリルによる穴あけを想像してもらいたい。錐でもよいが。ドリルで何かに穴を空けると削り屑が出る。この削り屑をうまいこと穴から排出しないと、せっかく空けた穴が削り屑で埋まってしまい、ドリルを回すことができなくなってしまう。このため、通常のドリルでは、ドリル自身に螺旋状の溝を設けることによって、ドリルの回転を使って削り屑を穴の外に排出する構成を有している。
これに対し、ちきゅうで海底をkm単位で掘る場合には、ドリル先端(ビット)に設けられた穴から液体を噴出し、この液体をドリル周囲と穴の内壁面の間を通って穴の外へ抜けるように流すことによって、削り屑を穴の外に排出するわけである。

詳しくは説明しないが、流体に海水を使っている場合には掘り進める深さに限界がある。そこで、ちきゅうでは、ライザー掘削と称される技術が用いられている。ライザー掘削では、海水よりも比重が高く粘性の高い専用の流体を流すことによって、より深く採掘できるようにしている。専用の流体は海中に垂れ流しになるのではなく、ドリルの周囲を囲い、船と海底の穴の入口とを接続する管であるライザーパイプを介して回収される。なお、こういった掘削技術は、石油等の資源採掘の分野で発展を遂げたものであって、ちきゅう独自のものではない。(海底油田よりもさらに深い場所を掘る技術は独自のようだが。)

まあ、ややこしい理屈はともかく、ちきゅうでライザー掘削をする場合には、船体と最大2500m(4000mになる予定)下の海底とがライザーパイプで接続されるのだ。
ライザーパイプは、これ。
20091018-PA188868
これを何本も繋げて、どんどん海底に降ろしていくわけだ。2.5kmも。ちなみにドリルのパイプは最長10km。船の上はパイプだらけだ。

ライザーパイプの上端、すなわち船側の端部は、下図のような空気圧で伸縮する6本(写真では片側の3本しか見えていない)のシリンダーからなるライザーテンショナーと呼ばれる装置によって保持される。
このライザーテンショナーは、ライザーパイプがたるみすぎないように引っ張り上げるとともに、船が波や潮の満ち引きの影響で動いた場合にシリンダーを伸縮させることによって、船の動きをライザーパイプに伝えないように吸収する働きを有する。6自由度なわけだから、所定の範囲内なら大抵の動きに追従できるのだろうか。シリンダーの伸縮ストロークは15m。なにそれ。
20091018-PA188856

ちきゅうの船底には発生する推進力の向きを自由に変えられる6つの推進器が設けられている(アジマススラスター等と称される)。巨大首振り扇風機のマブチ水中モーター風みたいなものだ。
掘っている間に潮流や風で船が動いては困るので、GPSや海底に設置したビーコンを頼りに自船の位置や向きを検出し、この6つの推進器を駆使して船体を一箇所に留めるわけである。下図は艦橋にあった表示画面の一つ。左側は、おそらく、個々の推進器の向きと推力の状態を表示している。
20091018-PA188776

見学に行けば、カッコイイ作業者の姿も見られるし。
20091018-PA188783
その他色々カッコイイので、是非見学していただきたい。説明してくれる人々も親切で丁寧だ。
20091018-PA188848

20091018-PA188850

なお、ちきゅう船内は寄港中であっても交代制で24時間休みなしで稼働しているそうだ。そのため夜間は常に外部の照明が灯されておりとてもステキ。
20091018-PA188710

清水港では夜間に近づけるかどうかわからないが、遠目に見てもすさまじい存在感で印象的だ。時間に余裕があれば、夜のちきゅうも眺めて欲しい。
20091018-PA188541 パノラマ写真
posted by メカパンダ at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月05日

此花大橋

P1161374
大阪市此花区の舞洲に架かる吊橋。自碇式(自定式)吊橋と称されるあまり見かけない形式で、アンカレイジ(アンカーブロック)と呼ばれる構造が存在しないのが特徴。

下図はよく見かける構造の吊橋。アンカレイジとは、下図左下に写っているコンクリート製の箱状の構造物で、橋桁を吊るためのケーブル(一対の主塔の間で弓なりになっている太いケーブル)を両側から引っ張って地面に固定するための、重りのようなものだ。
P9076230
洗濯物を干すロープを考えてみると、ロープ(ケーブル)の両端部を所定距離だけ離れた2箇所のフックに固定せずにだらりと掛けただけの場合、洗濯物(橋桁)を吊すどころかロープ自体が自重で落下してしまう。したがって、ロープで洗濯物を吊り下げられるようにするためには、ロープ及び洗濯物の重さに応じてロープを引っ張ってやる必要があることは想像できるだろうか。
数kgから数十kg程度の洗濯物の場合、柱や壁にロープを結びつければ良いわけだが、規模が桁外れの吊橋では、アンカレイジという巨大な重りによってケーブル両端を引っ張るのが一般的なやりかたである。このような、ケーブル両端を地面に固定する吊橋の形式を他碇式吊橋と称するが、吊橋と言ったらほぼこの形式なので、わざわざ他碇式と付すことは希なようだ。

で、此花大橋の自碇式に戻るわけだが、ケーブルの端にアンカレイジが無いことがわかるだろうか。
DSC00243
あるじゃないかと言われると困るが、それは橋脚だ。
では自碇式吊橋ではどうやってケーブルを引っ張っているのかというと、ぶら下がっている橋桁がその役割を果たしている。自碇式吊橋では、橋桁の両端にケーブル両端が固定されており、橋桁が突っ張ることによってケーブル両端を引っ張っているのだ。

また、此花大橋は、ケーブルが1本しかないという点も特徴だ。
DSC00342

DSC00357

さて、この此花大橋。両側に歩道が設けられていて、歩行者自転車も渡ることができる。歩道は、舞洲側は車道に沿って設けられているのだが、その反対の北港側は車道から離れてループ状になっている。
DSC00561
4回転のループだ。
DSC00381
上から見るとこう。
DSC00362 パノラマ写真
ムリヤリ感が漂う、お好きな人にはタマラナイ空間であると思う。
DSC00373
なんじゃこりゃー、と思いながら上り下りするがヨイ。

この近くは、北港ジャンクションや、夢舞大橋大阪市環境局舞洲工場といった魅力的な構造物があるので、是非訪れてみていただきたい。

ラベル:吊橋 関西
posted by メカパンダ at 01:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月29日

夢舞大橋

P1161344 パノラマ写真

大阪市此花区の埋め立て地である夢洲と舞洲を結ぶアーチ橋。背の高い船を通すことができるように作られたいわゆる可動橋であり、より詳しくは鉛直軸周り(水平方向)に回転して水路を空ける旋回橋である。
動く橋は他にもたくさんあるのだが、この夢舞大橋の特殊なところは、長さ400mを越す巨大なアーチ部が船のように海上に浮いており、船を通す場合にはこのアーチ部全体が片開きのドアのように回転するという豪快な構造にある。

すなわち、このアーチ部の脚の部分は、海底に着いておらず浮いているのだ。
P1161369

下図中央付近に鉛直方向に立った円柱状の構造が見られるが、この中に橋の回転軸となる回転ピンが納められている。少し下方に飛び出しているのが回転ピンの下端部だ。そして、橋の回転時には回転ピンは下方に突出する。
P1161344
ピンというとかわいらしいが、その直径は約1.6m。Googleマップのピンぐらい巨大だ。

この回転ピン及び回転ピンを収納する構造は、回転するアーチ部側に設けられている。一方、図ではわかりにくいのだが、回転ピンの下方には、海底に固定された状態の軸受が設けられており、橋の回転時には回転ピンがこの軸受内に挿入される。
P1161360
要は、橋の回転時には、浮いているアーチ部側に設けられた回転ピンが海底に対して固定された部分に突き刺さり、そこを中心としてアーチ部が回転する、と理解すればよい。なお、この橋自体には回転するための動力装置は備えられておらず、タグボートという小型の船によって押し引きされることによりこの橋は回転する。まさしく大型船だ。
DSC00270
なぜ常に回転ピンが軸受に突き刺さった状態ではなく、このように上下する複雑な構造としているのかは定かでない。おそらく、風や波によってアーチ部が傾いたときに無理な力が加わらないようにするためだと思うけれども。

だったら回さなきゃよくね?と言う疑問は持ってはいけない。回したかったのだ。きっと。

さて、アーチ部は海上に浮いており、かつ回転ピンは通常時には海底側に突き刺さっていないと説明した。このままでは、浮いているアーチ部は風任せ潮任せでどこかへ流れて行ってしまう。
そこで、このアーチ部がふらふらしないようにするために設けられているのが反力壁だ。下図中央の金属光沢があり、鉛直上方に向かって立っている部分が反力壁。これが両岸の橋のたもとにおいて橋の左右両側に対をなして設けられている。すなわち反力壁は4箇所に設けられている。
P1161367
一方の岸側に着目すると、一対の反力壁は、橋が回転しないときには上図のように立ち上がって、左右からアーチ部を挟み込んでいる。そして、橋が回転するときには、この一対の反力壁が、下側を基点として上側が橋から離れるように倒れる。要は、反力壁は、海底に固定された洗濯ばさみだ。
ただし、潮の満ち引きによって海上に浮いているアーチ部は上下に動くため、反力壁はがっちりとアーチ部を挟み込んでいるわけではなく、アーチ部の上下方向への動きを規制しないような構造となっている(詳細略)。

さて以上の説明で、回転ピンを軸受に突き刺した後に、反力壁を倒せば、アーチ部が回転できるようになることは理解できたであろうか。だが、以上の構成だけであると、アーチ部に人や車が乗ることができない。両岸からアーチ部に架ける桁が必要だ。この桁は、夢舞大橋では緩衝桁と呼ばれている。
P1161365
この緩衝桁は、橋が回転しないときには、潮の干満に伴うアーチ部の上下動に合わせて動くように、一端がアーチ部に載っかり、他端が地上側に載っかっていないといけない。上図はアーチ部側。下図は地上側。
DSC00268
地上側は、このV字状の橋脚の上の部分を基点として、アーチ部の上下動に追従して上下に揺動する構造になっている(と思う)。
DSC00272
一方、橋が回転するときには、アーチ部の回転を妨げないように、緩衝桁はアーチ部から離れていないといけない。そこで緩衝桁の下側には、緩衝桁の一端(アーチ部側)を持ち上げるためのジャッキが設けられている。
DSC00264
上図がジャッキ。このジャッキが上方へ伸びて、緩衝桁をアーチ部から離れるまで持ち上げるわけである。

以上の構成で、ようやく浮いているアーチ部が橋として機能し、かつ必要なときに回転することが可能になるわけだ。

浮かさなきゃイイじゃん。と言うツッコミは行ってはいけない。浮かしたかったのだ。きっと。
この構造を提案した人は、思いついたときから作ってみたくて仕方がなかったに違いない。強度試算で、回転ピンの直径1.6mとか、うひゃぁありえねー。なんてニヤついていたに違いない。
我々は、この橋を見て、大型構造物が変形するというロマンをそんな関係者と共有できる。素晴らしい感動エンターテイメントではないか。それでいいではないか。

(いや、埋め立て地なだけに、固定された高い橋にすると地盤の強度や沈下の問題があるのだと思います。)

ちなみに、回転させるための構造だけでなく、アーチ部自体もダブルアーチ形式と称する見慣れないカタチをしており、この橋のシルエットをさらに特徴的にしている。他のアーチ橋と見比べて骨太な感じだ。地面に固定できる部分がない(浮きの部分は鉛直下向きの荷重しか受けることができない)ために、こういう形状になったのだと思われる。
P1161350

ともかく、以上の重厚長大な構造、及び完成以降に訓練以外で橋が回転したことがないという事実をふまえた上でこの夢舞大橋を間近に見ると、何考えてんのアンタ、バッカじゃないの、とかイロイロ心を動かされるので、是非見に行ってもらいたいものだ。


なお、夢舞大橋の開閉の仕組みについては、
土木学会のPDF形式の文書や、
カオスさんのブログ
に詳しく記載されているので是非ご覧頂きたい。おどろくぞー。

ラベル: 関西 アーチ橋
posted by メカパンダ at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。