2010年02月11日

地球深部探査船ちきゅう

来月、2010年3月6日・7日には、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する地球深部探査船「ちきゅう」の一般公開が、清水港で行われる

清水港であれば関東、東海から訪れやすいので、これを機に多くの方にちきゅうを見学していただき、JAMSTECの活動への理解を深めていただきたいものだ。これ、独立行政法人への風当たりが強くなってきたこのご時世にはとても重要。
以下の紹介がその一助になれば幸いである。

ちきゅうとは、こんな船。
20091018-PA188913

船体中央部にそびえ立つ櫓とその周囲に配置された複数のクレーンが特徴的だ。
20091018-PA188929

櫓の高さは、船底から130m。高い。
20091018-PA188796 パノラマ写真

そして、この櫓の足下には、船体を上下に貫通する穴(ムーンプール)が設けられている。下図は、櫓の足下を拡大したものだ。下図に円錐状の物が直立している床があるが、その下の真っ暗な部分がムーンプールである。この下に海面があるわけだ。
20091018-PA188809

さて、こんな穴のあいた船で何をするのかというと、海底の地盤をドリルでごりごりと掘って地層のサンプルを収集するのである。ムーンプールを介してドリルを海底に向けて降ろすのであり、その上げ下げや組立の作業を行うのが櫓。
ドリルを回すのは、下図左のやや上に写っている黄色いモーター。その手前にあるオレンジ色なものは人間。
20091018-PA188819

サンプルを何に使うのかというのは色々あって、海底内生物の研究とか、地球構造の解明に用いられる。南海沖の海底を7000m掘ってマントルのサンプルを得て、地震のメカニズム解明に役立てるのが大きな目標の一つらしい。

ただ、このちきゅう、統合国際深海掘削計画(IODP)という国際的な科学プロジェクトに用いられるために建造されたものであるので、日本の税金で作ったからといって、完全に日本の都合で好き勝手に使えるわけではない。日本は、ちきゅうを提供することによって、このプロジェクトにおける一部の研究テーマの主導権を得た、というような話のようだ。核融合にしろ大型加速器にしろ、巨大科学プロジェクトにおける政治的な話はよくわかりませんね。

下図がドリルの先端(ビット)。これをごりごり回す。
20091018-PA188839
真ん中に穴があいているが、この穴は、この内部に挿入されるパイプの中に地層のサンプルを詰め込むためのものだ。また、この穴は流体を噴出するためにも用いられる(違う穴かもしれない)。

ビットから流体を噴出する理由の理解のためには、まず、ドリルによる穴あけを想像してもらいたい。錐でもよいが。ドリルで何かに穴を空けると削り屑が出る。この削り屑をうまいこと穴から排出しないと、せっかく空けた穴が削り屑で埋まってしまい、ドリルを回すことができなくなってしまう。このため、通常のドリルでは、ドリル自身に螺旋状の溝を設けることによって、ドリルの回転を使って削り屑を穴の外に排出する構成を有している。
これに対し、ちきゅうで海底をkm単位で掘る場合には、ドリル先端(ビット)に設けられた穴から液体を噴出し、この液体をドリル周囲と穴の内壁面の間を通って穴の外へ抜けるように流すことによって、削り屑を穴の外に排出するわけである。

詳しくは説明しないが、流体に海水を使っている場合には掘り進める深さに限界がある。そこで、ちきゅうでは、ライザー掘削と称される技術が用いられている。ライザー掘削では、海水よりも比重が高く粘性の高い専用の流体を流すことによって、より深く採掘できるようにしている。専用の流体は海中に垂れ流しになるのではなく、ドリルの周囲を囲い、船と海底の穴の入口とを接続する管であるライザーパイプを介して回収される。なお、こういった掘削技術は、石油等の資源採掘の分野で発展を遂げたものであって、ちきゅう独自のものではない。(海底油田よりもさらに深い場所を掘る技術は独自のようだが。)

まあ、ややこしい理屈はともかく、ちきゅうでライザー掘削をする場合には、船体と最大2500m(4000mになる予定)下の海底とがライザーパイプで接続されるのだ。
ライザーパイプは、これ。
20091018-PA188868
これを何本も繋げて、どんどん海底に降ろしていくわけだ。2.5kmも。ちなみにドリルのパイプは最長10km。船の上はパイプだらけだ。

ライザーパイプの上端、すなわち船側の端部は、下図のような空気圧で伸縮する6本(写真では片側の3本しか見えていない)のシリンダーからなるライザーテンショナーと呼ばれる装置によって保持される。
このライザーテンショナーは、ライザーパイプがたるみすぎないように引っ張り上げるとともに、船が波や潮の満ち引きの影響で動いた場合にシリンダーを伸縮させることによって、船の動きをライザーパイプに伝えないように吸収する働きを有する。6自由度なわけだから、所定の範囲内なら大抵の動きに追従できるのだろうか。シリンダーの伸縮ストロークは15m。なにそれ。
20091018-PA188856

ちきゅうの船底には発生する推進力の向きを自由に変えられる6つの推進器が設けられている(アジマススラスター等と称される)。巨大首振り扇風機のマブチ水中モーター風みたいなものだ。
掘っている間に潮流や風で船が動いては困るので、GPSや海底に設置したビーコンを頼りに自船の位置や向きを検出し、この6つの推進器を駆使して船体を一箇所に留めるわけである。下図は艦橋にあった表示画面の一つ。左側は、おそらく、個々の推進器の向きと推力の状態を表示している。
20091018-PA188776

見学に行けば、カッコイイ作業者の姿も見られるし。
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その他色々カッコイイので、是非見学していただきたい。説明してくれる人々も親切で丁寧だ。
20091018-PA188848

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なお、ちきゅう船内は寄港中であっても交代制で24時間休みなしで稼働しているそうだ。そのため夜間は常に外部の照明が灯されておりとてもステキ。
20091018-PA188710

清水港では夜間に近づけるかどうかわからないが、遠目に見てもすさまじい存在感で印象的だ。時間に余裕があれば、夜のちきゅうも眺めて欲しい。
20091018-PA188541 パノラマ写真


posted by メカパンダ at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 人工物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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